観劇の楽しみ(2) 演劇のページに戻る
観劇の魅力は,まさに役者の生の声を聞きながら,物語が展開していくところにあることは前にも述べた。
最近その楽しみがもうひとつ加わったように思える。
それは芝居を見ているその瞬間瞬間に,役者のしゃべっているせりふを聞くというより,自分がせりふを発するように頭の中で反芻(はんすう)してみることである。あるいは役者のせりふと合わせるようにしてみる。
役者の視点に目を移し,相手役の役者を見つめる感じで頭の中でせりふをしゃべるようにもしてみる。
せりふの魅力とひいては物語の魅力が倍加するように思える。又,よくぞこれだけのせりふを覚えたものだという実感もわいてくる。相手の役者がせりふを言うときはその役者にもなろうとしてみる。返すせりふの間合いなどもわかってくる。
このことは,『モンテクリスト伯』『幸せの背くらべ』を見てから感じだした。
あとでその戯曲が手に入れば,気に入ったところのせりふを読み返してみるといい。その場面の,役者の表情や所作までもよみがえってくる。だから戯曲を読むことは芝居を二度楽しむことにもなる。
おかげでいままでもいい芝居ばかり見ることができた。やはり役者一人ひとりが一生懸命せりふを覚え,力いっぱい演じているからだろう。
とまれ,芝居を見ることの楽しみがさらに増えたことはいいことだ。
(2001.7.3) 池原一郎